『通りすがりのあなた』が世の中に届く前に


9月に入り、少し肌寒くなりはじめた頃、

ついつい夜更かしをして本を読み耽ってしまう季節がやってきた。

土曜日の昼下がりに1冊の本が家のポストに届いた。

はあちゅうさんの新刊『通りすがりのあなた』だ。

発売日は、9月26日とまだ先ではあるが、はあちゅうさん主宰の「小説PRサロン」に入っている僕は、世に届く少しだけ早くプルーフ版(見本本)を手にすることができた。

はあちゅうさんといえば、世界一周をしたブロガーとして一躍有名となり、その後も会社員を経てフリーランスとして若い世代を引っ張る著名人。

彼女の魅力とは何か? については様々な意見があるだろうが、ぼくはインターネット、スマホの浸透によって激変した「不確かな時代」に立ち向かう強さににあると思っている。

ここ数年で人々の生活は大きく変わり、僕たち20代の多くは「わかりやすい正解」を奪われた世代だ。何が正しいかわからず日々模索しながら暗い洞窟を彷徨う感覚で生きている。

はあちゅうさんはそんな、暗い洞窟を照らしてくれる光のようで、若い世代を率いるかの如く前へ前へと道を切り拓いている存在だ。

1年前、会社員の僕ははあちゅうさんの『半径5メートルの野望』を読み、ブロガーとしてのはあちゅうさんとしてではなく、執筆者(作家)としてのはあちゅうさんのファンになった。

そして、このたび小説家としてデビューすることになった小説家・はあちゅうの処女作とも言える

それが小説『通りすがりのあなた』である。

僕はさっそく、本書がこの複雑世の中をどのように切り取り、僕たちに語りかけてくれるのか、と期待しながら本を開いた。

そして、読み終わったいま熱が冷めないうちに、『通りすがりのあなた』をファンの目線ではなく、1人の20代の読者として少しだけフライングして感想をつづっていきたい。

小説『通りすがりのあなた』

通りすがりのあなたは。7つの短編小説から構成されている。

  • 「世界が終わる前に」
  • 「妖精がいた夜」
  • 「あなたの国のわたし」
  • 「六本木のネバーランド」
  • 「友達なんかじゃない」
  • 「サンディエゴの38度線」
  • 「世界一周鬼ごっこ」

 

本のテーマは「名前がつけられない人間関係」だ。

それは一体どういうことか?

はあちゅうさんは本の中でこのように語っている。

友達ではないけれど恋人とは言い難い人、普段生きている場所は違っても心の支えになっている人、一度しかあっていなくても人生に大きなインパクトを残してくれた人・・・。

僕たち人間は社会的な生き物で人と関わりあって生きている。しかし、全ての関係を明確な言葉で説明することはできない。

しかし、言語化されていない関係性であっても、そこには確かな関係性が存在している。

第3篇(という言い方が適切か分からないが)「あなたの国のわたし」で、日本人のサキに対して、日系イギリス人のマリアはこう語った。

日本には人間関係のグレーゾーンを指す言葉が少ないって私は思うよ。

人の数だけ人間関係はあるし、呼び方のわからないあいまいな人間関係だって、「いくつあってもいいじゃないか。」というのが本書の主旨である。

そんな、スポットの当たらない「ルールから外れたところに在る美しさ」をテーマにした本。

第5篇の「友達なんかじゃない」では、十七歳の夏休みにパナマにホームステイをしていた「ハルナ」からみた世界を描いた物語となっている

十七歳というまだ幼く狭い視点からみた体験記ではあるが、留学を通じて経験したことのない「人間関係」を肌で感じながら内面の成長を描いている。

パナマから帰国するシーンでは、一緒にパナマ留学に選ばれた日本人の佐久間君に

ハルナはパナマで、友達出来た?」と聞かれると

出来てない」と一拍おいて、

まあ、一生忘れない人にはたくさん会ったけど

という返しをした。

日常から逸脱した場所にこそ、感性の研磨が行われると感じた。

 

旅を題材にしている物語が多いのははあちゅうさん自身の経験という理由だけでなく、旅という時間は日常という制約を超えたつながりが生まれやすいというのも1の理由だろう。

世界一周鬼ごっこ」はまさに今回のテーマを凝縮したような最後の物語。

旅人のコウさんと、就活を終えたばかりの女子大生リサの旅先での出会いから始まり、1日遅れの”鬼ごっこ”が始まる。

旅をしているときに出会った人たちは特別で、ちょうど秋になると何度も「あの時、連絡先を聞いておけばよかったな」とふと思い出すことが多い。

何年経っても甦る大切な記憶はなぜいつも、手の届かない場所にあるのだろうか、ということに答えがでたような気がした。

最後のメッセージを書き終えたゴウさんは、リサから大事な何かを得ていたのかもしれない。

そして、その記憶を永遠に留めておくために、もしかしたら会えなかったのではなく、「会わなかった」のかもしれない…と。

読み終えて

僕は昔から理由はないけれども旅が好きだった。

今でも長い休みがあれば1人でも海外に行くことだってある。

そしていつだって後悔していることもある。それは旅先でほんの短い間だけれども、出会った人々に連絡先を聞けなかったことだ。それはタイミングだったり、その時の気持ちの問題だったりする。誰もが一度や二度は経験したことがあるだろう。

しかし、だからといって今まで旅で出会った人たちは決してすれ違いなんかではなく、そこには物理的につながることはないけれども、一瞬でも、永遠のような確かな関係性ができていたんだと「通りすがりのあなた」を読み終えて気づかされた。

本記事では3篇のほんの一部分だけを取り上げてみたが本記事ではここまでにしておきたい。他の物語も取り上げさせて頂いた3篇同様に、「名前のない人間関係」の新たな側面を目撃できるかもしれない。

つながることは決してない「通り過ぎるあなたに」人は心を奪われるだろう。

発売日は9/26を予定

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あくまでもプルーフ版(最終稿前)なので、発売後の本は一部内容に変更があるかもしれないことはご了承ください。


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